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ダライラマ3世ソナム・ギャツォ・その密伝 2009年10月24日更新

ダライラマ3世ソナム・ギャツォ・その密伝

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面白テーマ|彫刻・書画|>ダライラマ3世ソナム・ギャツォ・その密伝

西チベット、グゲ地方
16世紀第3四半期
綿布着色
123.2×93.3cm
個人蔵
このタンカは特に見事な、そして重要な絵画である。ダライラマ3世であるソナム・ギャツォ(1543-1589)の姿が中央に描かれる。ソナム・ギャツォは、1578年、アルタン汗時代のモンゴルにチベット仏教を広めたことや、1582年に創立されたツォンカパの故郷アムド(現在の青海省)にあるクンブム寺の創立者として知られる。魅惑的な微笑をたたえた口元や目などの部分部分の表現からみても肖像画として良くできている。ソナム・ギャツォの生涯の場面が多くあらわされている。主に奥義についての伝記の場面が描かれ、秘儀の性質のゆえに通常通りには、絵にあらわされない。
 タンカはトゥッチがチベットの主要都市であるルクで入手したもので、この地方のグゲ・ルネサンス様式で描かれている。長大な論究の中で、トゥッチは、蓮華座の下に垂れる布に描かれている王族の寄進者は、グゲを支配する一族であると考えている。彼らは、ソナム・ギャツォが王子のひとりを訪問したと記録されている1555年以降に、この絵の制作を依頼したと考えられる。ソナム・ギャツォは、1577年にモンゴルヘ歴史的訪問をする前には、西チベットヘ少しは訪れていることもわかっている。したがってこの時期に描かれたとみることはできる。いずれにせよ、この絵はまちがいなく16世紀第3四半期に制作されたものである。このことはとても重要なことである。これがダライラマ3世の在世当時の肖像であり、しかもグゲ地方の作例がほとんど存在していないからである。 金彩による装飾文と、薄紫色や茶色、赤色で微妙な乗取りをほどこした明るい色の衣をまとい、生き写しのようなラマの主尊は見事な花のようである。主尊は画面の大きさにくらべて小さめに描かれており、蓮台と動物で飾られた背板のある獅子座に座り、左手に無量寿仏の持物である甘露の瓶を持つ。背後に光扉があり、頭上の龕は、唐草状の摩鶏魚(makara:空想上の動物で鰐と魚をあわせたもの)の尾がみられる。諸要素がインド・ネパール様式に由来する伝統的な表現で、15世紀の間ツァンとグゲの僧院で形成された様式である。しかしながら、線描の明るさや体の仲びやかさ-とくに触地印をとる長い右手にみられる-と、抑制された色調は、16世紀西チベットの流派とは異なる要素が見られる。中尊の周囲には多くの伝記の場面があるが、ほとんどがダライラマの瞑想による画像や夢や教えを描いたものである。縁や画中に題記があり、それが読める部分は場面を同定できる。
 僧院の情景の豊富さによって建築的な形が主な構成要因になっている。さまざまな建築が二次元的だが多様な形で細部まで描きこまれ、色調の美しさによって、反復過多に陥らないでいる。白い壁と窓や扉といった黒い木造部分、建物には、時折明るい橙色も使われ、屋根の金色、これらが全体の青い地色と反響しあっている。建築物は、繊細で半透明な抽象的な色彩を織りなしている。山や樹木、暗青色の空や雲にみられる単純かつ抑制された風景描写が建築の場面をそれぞれ分けてまとめている。天と地の形が、超越的な明るさで浮かぶ、この神秘的な美しい場面の品格と感性は、ダライラマの伝記の神秘的な事績に合った感動的な雰囲気を作り出している。出所:天空の秘宝チベット密教美術展 2009.09.19更新
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