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アノンシアード美術館 2009年7月18日更新

アノンシアード美術館

【和:アノンシアードびじゅつかん
【中:Musee de L'Annonciade
研究機関|>アノンシアード美術館

豪華なヨットが停泊している南仏サントロッベ港のかたわらに白い小さな教会が、澄みきった青空の下にひっそりと建っている。十六世紀中ごろにアノンシアード(告知)教会として建てられたこの建物は、現在アノンシアード美術館として一般に公開されている。
一九五五年七月十日に拡張された美術館が開館し、このときの美術館管理者は、実業家ジョルジュ・グラモンと改築を手がけた建築家ルイ・スー、画家のデュノワイエ・ド・スゴンザックの二人であった。グラモンは翌年一月にこの世を去ったが、彼の遺贈作品、 一八九〇年から一九五〇年の間の後期印象派、ナビ派、フォーヴィスム、そしてアンデパンダンの作品五六点が中心に展示されている。
小さな門から入ると、内側は明るい光に包まれていた。白い壁、大理石の床、荘厳で静かな空間は、昔の教会の面影を漂わせている。一階に二十点、中二階に十点(天井が低く、おそらくここはオルガンでも鳴らした場所であろう)、そして、ニ階に六十点ほど飾られている。コレクションの中でも、向い空間のせいかフォーヴィスムの作品群がまず強く迫ってくる。マテスの人物画「ジタン」は基本的な色や形が要約された強いフォーヴィスムの絵である。
ヴラマンクの「シャトーの橋」や「静物」は、キャンバスに生の色を荒々しくぶつけたヴラマンクとは別人のような世界がある。 ドランの「水の上の太陽、 ロンドン」は、空と海と害という単純な主題を赤と黄と紺と緑で表現した美しい夕焼けの海である。マルケ、サントロッペで亡くなったマンギャンそしてフリエスの作品もある。
後期印象派の作家、スーラ、シニャック、クロスの作品もある。スーラは小品の「グラベリンの川」がある。シニャックは「サントロッペの眺め」や「サントロッペ港」など油絵とクレヨン画を合わせると十点ある。クロスも「木陰の裸婦」や「サン・クレールの海岸」などを描いている。このグループの人たちは、あくまでも優しく柔らかい色彩を点描でまとめている。
ナビ派の、ボナール、ヴュイヤール、ドニなどもある。ボナールの作品の中では「暖炉の前で」の裸婦が美しい。ヴュイヤールの室内の作品も楽しい。ボナールは晩年南仏に住み、「サントロッペ港に「カンヌ港」を描いている。
ドンゲンの作品では、彼らしい大きな眼をした婦人像「手摺りの女たち」が私は一番好きだ。色を抑えたマルケの風景は、霞んだようなグレーがかった画面で冬のパリを表現するのにぴったりである。ドランも一九二〇年ごろの「若い女の肖像」があり、フォーヴィスムと全く違ったもので二つの時期を比較できて興味深い。 その他、デュフィ、ルオー、ユトリロ、ヴァラドンなど日本でもおなじみの作家たちの絵や初期の管理者の一人であったスゴンザックの作品が数点ある。彫刻もマイヨールが数点とデスピオなどが陳列されている。
この美術館には、作品がごっそりと盗難に遭うというユーモラスで、しかし笑えないエピソードがある。 一九六〇年七月十一日早朝四時、泥棒たちはトラックでやってきた。窓から侵入し、飾ってあった中から六十点を運び出し、悠々とトラックに積んで引き上げていったのである。それから大騒ぎになったのだが、何の手掛かりも掴めないまま二年間が過ぎてしまった。すっかり諦めていたある日、スゴシザックの絵をまとめて美術館に送り返してきたのである。その絵と一緒に『作品はヴェルサイユの近くに置いてある』という短い手紙が付けられていた。そして、指定された場所で無事全作品が見つかったという次第である。 出所:『美術館へ行こう』長谷川智恵子
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