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ロートレック美術館(フランス) 2009年7月17日更新

ロートレック美術館(フランス)

【和:ロートレックびじゅつかん
【英:Musee Toulouse‐Lautrec
研究機関|>ロートレック美術館(フランス)

三十六歳で早世した天才両家ロートレックの故郷アルビに、ロートレック美術館がある。
 フランス南部地方にはローマ時代の遺跡が多い。カルカソンヌ、二ーム、オランジェ、アヴィニヨン、アルルなどの町はコロシアムや城壁が昔日の面影をそのままとどめている。アルビも中世の面影が残っていて、大きな川がゆったりと町なかを流れ、悠久の歴史を語りかけてくれる。
 アルビの大聖堂、カテドラル・サント・セシルの横にあるパレ・ド・ラ・ベルビーという司教館がロートレックの美術館であった。赤瓦に青い蔦の絡まった建物は、私が想像していた以上に大きく立派なものであった。この美術館は、一九二二年に開館した。ロートレックの友人、出面のモーリス・ジョワイヤンの協力と母親の伯爵夫人からの寄贈により造られた。一般に、両家の生まれ故郷に造られる美術館は、その画家の生家を中心とした記念館が多く、作品の数も少ないのが普通である。しかし、この美術館は作品の質量比ハに豊富である。
 油絵二一四点を含む六百点の所蔵作品は、若くして死んだ作家のコレクションとしては見事なものである。
 写真に目にる少年のころのロートレックは、名門伯爵家の令息らしく気品がある。不幸は十三歳のときに始まった。ちょっとした事故で、何度も骨折してしまう。先天的に骨のもろい体質であり、上半身は正常なのに、下肢の成長が止まってしまった。自分の不幸を盛り場の女たちに投影したのであろうか、ロートレックはニ十歳のころから、パリのモンマルトルに出入りするようになった。
 ムーラン街の酒場の娼婦たちは皆、不幸な運命を背負って生きていた。ロートレックは彼女たちを温かく見守りながら、一方で鋭い画家の眼が彼女たちの哀歓に迫った。世紀末の不幸と華やかさの中で、ロートレックは彼女たちを愛情豊かに描いた。今、一世紀を経て、彼女たちはロートレックの代表作品として永遠の生命をもって、私たちに語りかけてくる。
 少年のころの作品から並べられているが、やはりモンマルトルの女性たちが登場してきてから、ロートレック芸術は開花したように思う。モデルと画家が自然に溶け合って、確かなデッサンカで軽やかに流れるような筆のタッチは誠に魅力的である。画面からは酒場の音楽や娼婦たちのため息や息遣いが、耳元に聞こえてくるようだ。
 一九六八年に京都の展覧会場で盗まれ、七年後に返されたという「マルセル」も、今はひっそりとこの美術館に飾られている。この作品は一八九四年、脂の乗ったころに描かれた。そして、この年に一番多くの作品を描いているのである。一八八八年からモンマルトルの女性を描いたロートレックだが、どの作品にも一様に沈んだ哀しみが流れている。「イヴェット・ギルベール」(一八九四)「アリスティード・ブリュアン」(一九九二)など、ベル・エポックのモンマルトルの有名人たちがモデルとなっている作品群はいずれも見応え充分である。
 ロートレックは、よくモンマルトルの友人たちを招いて自分の手料理をご馳走したという。美術館では、その楽しいメニューや招待状の複製も売られていた。出所:『美術館へ行こう』長谷川智恵子
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