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アングル美術館(フランス) 2009年7月17日更新

アングル美術館(フランス)

【和:アングルびじゅつかん
【英:Musee lngres
研究機関|>アングル美術館(フランス)

バリのルーヴル美術館で、レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」に劣らない人気を集めるのが、アングルの「グランド・オダリスク」や「ヴァルパンソンの浴女」である。アングルの典麗で繊細な画風には、古典の息吹が脈々と流れているだけでなく、見る者の心を揺さぶる生き生きとしたドラマが秘められている。
 そのアングルの生地である南フランスのモントーバンにアングル美術館がある。モントーバンまでは、まずパリから飛行機でフランス南部の代表的工業都市トゥールーズに飛び、そこからは車で高速道路を走る。飛行機の所要時間は一時間、高速道路は約二十分、モントーバンの町に入ってから約十分、乗り継ぎの時間を入れても約二時間の小旅行で、目的地に着くことができる。
 アングル美術館は、赤い煉瓦造りの古い建物が残る一角にあった。このあたりの通りに沿って中世の教会や広場が並び、歴史に思いを馳せながら散策するには格好の場所である。
 ジャン・オーギュスト・ドミニク・アングルは、一七ハ○年、モントーバンに生まれた。少年時代はトゥールーズで学び、十七歳のときパリに出た。一八〇六年、画家の登龍門であるローマ大賞を受賞して、ローマヘ。一八六七年にパリでその生涯を閉じた。古典派のダヴィッドのあとを継いで、形式にがんじがらめになっていた美術界に鮮烈な生命を吹き込んだ天才画家である。後のドガ、ルノワール、ピカソらが彼に心酔した話は有名である。
 美術館は、赤煉瓦造りの四階建ての館で、中庭の広場をコの字形に囲んで建っている。一八四三年開館、元市長のコレクションをもとに設立され、後にアングル自身が寄贈した油絵、古陶器、彼の死後に遺贈された四千点のデッサン、版画、遺品のバイオリンなどを所蔵している。
 「アングルは二階だよ」という、気のよさそうな守衛さんの声に導かれて、館の石造りの階段をのぼる。のぼりきった最初の部屋から、そこはもうアングルの世界だった。そこには、キリストを主題にした作品が展示されていた。
 次の部屋では、思いがけない美しい作品に出会えた。「バルトリーニの肖像」「オシアンの夢」「アンジェリカを救うロジェ」などである。「アンジェリカを救うロジェ」は、一八一九年に描かれた作品の縮小図で、原画はルーヴル美術館にある。この部屋には、アングルの作品にまじってジェリコー、ドラクロア、シャッセリオーらの作品もあった。
 続く部屋は、アングルの居間を想定したような構成になっていて、デッサンのほか、彼が愛用した品々が展示されていた。なかでも興味をそそられたのは、アングルの父親が描いた人物のデッサンと、それを構写したアングルのデッサンが並べられていたことである。アングル十一歳の作といわれ、父親のデッサンに比べると鋭い線が生き生きと描かれている。このときすでに、天才アングルの才能は芽吹いていたのであった。
 アングルとバイオリンの組み合わせも、興味をそそられた。アングルは音楽について造詣が深く、後に「アングルのバイオリン」という慣用句が生まれたほど、その腕前は単なる趣味の域を超えていたという。
 アングル美術館の展示配置を大まかに説明すると、一階はモントーバン・スクール出身の画家たちの作品、ブールデル記念室(モントーバン出身)。二階がアングルの作品や遺品中心の展示室、三階はリヨン派(フランス東南部リョンで描かれた宗教画)、イタリア派、十五世紀スペイン絵画などの古い時代のコレクションで、地下に十七世紀の絵画が展示されている。
 美術館の鉄門を出て、古い石畳の表通りに立ったとき、アングルの優麗典雅な作品が、歴史のある館にしっとりとなじんでいたことを思い起こし、再び感慨にひたったものであった。出所:『美術館へ行こう』長谷川智恵子
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