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黄釉浮彫陶尊 2008年12月12日更新

黄釉浮彫陶尊
【和:こうゆううきぼりとうそん
【中:Huang you fu diao tao zun
秦・漢・三国|陶磁器|>黄釉浮彫陶尊


高22, 口径18.3cm
1980年5月内蒙古包頭市召湾漢墓出土
口は筒状で口径は底径より大きく,変体博山式の蓋。蓋の縁に曲折した弦文2条があり,落とし蓋,三熊足。口縁の近くと底部にそれぞれ連山をめぐらす。腹部全面に各種の浮き彫りを施す。浮き彫りの内容は,上古の神話物語,吉祥禽獣,甲冑をつけた武士,舞踏戯楽図など,計29種47図。 6組に分けることができる。
第1組は薬を搗く玉兎,神女,西王母,怪神,三足鳥。 玉兎が薬を搗く文様は漢画像石中に割合いよく見られる。玉兎の位置に月が見られず三足鳥のところに太陽がないので(古代神話で玉兎は月に,三足の鳥は太陽に住むとされる), この組の文様は「陰陽」の話とはあまり関係がなく,長生不死,円薬精錬の黄老思想との関係が密接であることを物語っている。ここの女神は月に奔った垣蛾ではなく,西王母に仕える神女にちがいない。
第2組は甲冑をつけた武士,有翼馬,雌豚,蟾蜍, 梟,一角羊,鶏,狸,熊,虎など。 甲冑をつけた武士は『山海経』に見える,度朔の山で万鬼を検査する神荼、鬱壘の2神に違いない武士のかたわらにうずくまる熊は瑞祥の獣で、漢代の「大儺」(おにやらい、ついな)において方相氏(儀式を司る巫祝)が熊皮をかぶり悪鬼を追いはらうことや,鯀,禹の2聖王が熊に化した神話伝説とかかわりがある。有翼馬,鶏,梟,一角羊,狸,白虎はどれも瑞獣である。蟾蜍は月の象徴である。
第3組は羿,扶桑樹,月,三足鳥,長蛇,螭龍。『准南子』本経訓の,羿が太陽を射る伝説から材を取っている。
第4組は牛首人身,踑鋸(足を投げだしてすわる)する樹冠(樹の上におおいひろがる枝葉),鶏首人身の3つの怪物。牛首人身の怪物は神農氏(古代伝説上の皇帝の名。はじめて人類に農作を教えた。また医薬の神)に違いない。鶏首人身のものは商民族の祖神,帝俊かもしれない。踑鋸する樹冠は神草の類を象徴しているのか,あるいは立ち木の神格化であろうか。古書中に帝王を「獣格化」あるいは禽獣を「人格化Jする例は多く,これは氏族の起源に対する古人の一つの解釈である。
第5組は怪神の宴会である。漢画には宴飲舞楽の場面がきわめて多いが, ここの羽衣をつけた2怪神はいかなる神物か決めがたい。
第6組は九尾の狐。先秦,漢代に九尾狐は吉祥端兆のものとして広く描かれた。これは「天人感応」「懺緯」(神秘的なことを説いた予言書)の迷信が芸術上に反映したものである。
この尊は浮き彫りの内容の豊富さといい,文飾のにぎやかさといい,漢尊中にほとんど見られないものである。尊全体の造型は美しく,素朴でおおらか,彫刻の構図はゆるみがなく,写実の中にもいくらか誇張を帯び,にぎやかさの中にも構成がはっきりしており,ユニークな芸術的装飾の趣を持っている。文飾に彫られた登仙了道,長生不死を主題とし,神話,端祥,宴楽の内容を配したことは,前漢中晩期,イデオロギーの領域で陰陽五行,黄老思想,神話伝説,懺緯迷信がなお重要な地位を占めていたことを反映している。出所:中国内蒙古北方騎馬民族文物展
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