考古用語辞典 A-Words

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莫高窟第二九六窟南壁  2008年09月16日(火)更新

莫高窟第二九六窟南壁
【和:ばっこうくつだい二九六くつみなみへき
【中:Mo gao ku di 296 ku nan bi
晋・南北朝|彫刻・書画>莫高窟第二九六窟南壁

五百強盗涅47.0 横435.0
北周
  五百強盗成仏(あるいは五百盗賊帰仏)因縁図は、曇無懺訳の『大槃涅槃経』巻十六(あるいは『経律異相』巻五にも簡略に記される)を典拠とした譬喩説話(アヴァダーナ)図である。内容は、コーサラ国で反乱を起こし、国内を暴れ回った五百人の盗賊の物語。人々の苦しみを見かねた波斯匿王が官軍を差し向け、盗賊たちも俘虜となって城に連行され、両眼を挟り取られるという過酷な刑に処される。しかし山林に放逐され苦しみ叫ぶ彼らの声に慈悲の心を起こした仏は、神通力によって涼風と共に香山の妙案をその眼に吹き込む。再び光明を得た盗賊たちは、仏の説法を聞き前非を悔い、仏法に帰依して山林に隠棲、参禅成仏したという。
この話は、後に『法顕伝』や『大唐西域記』に、盲目にさせられた五百人の盗賊が開眼し、ついていた杖を地に突き刺したところ、それが後に林をなし祗園精舎近くの得眼林がそれであると記され、今日でも中国では、この説話を「得眼林故事」と呼んでいる。
本図は、西端を起点として以下の八宗から成っている。官殿で盗賊の動勢を聞き、出兵を下知する国王(①)、騎馬の隊長を挟んで前に二騎、後ろに四騎の官軍が隊陣を整えて討伐に向かう(②)、徒歩の盗賊五人と五騎の官軍兵士が弓、槍、刀などで激しく交・戦する(③)、捕らえられて騎馬の二兵士に拘引される盗賊と再び隊列を整えた官軍(④)、建物の前で処刑される強盗たち(⑤)、竹林で苦しみもがく盗賊たち(⑥)、眼を得て仏を拝する(⑦)、山林中で禅定す打る盗賊たち(①)。西魂第二八五窟の五百強盗成仏因縁図は、同内容の優れた先行作例であるが、ここで注目される両者の人きな相違点の一つは、第二八五窟壁画が、宮賊交戦のシーンから始めて盗賊たちの処刑、そして得眼帰仏に至る過程を、仏をニ度にわたって登場させ、清爽感豊かに描き出すのに対して、本図では、終始整然と秩序だった官軍の圧倒的描写が、むしろ画因となっているかのような、仏教説話画の持つ聖俗の位相の逆転が強く感じられる点である。当時の社会状況、とりわけ農民峰起の頻発と為政者たちの政治のありようがここに反映されているとすれば、まことに興味は尽きない。出所:『砂漠の美術館-永遠なる敦煌』中国敦煌研究院設立50周年記念

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