考古用語辞典 A-Words

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莫高窟第二五七窟南壁  2008年09月15日(月)更新

莫高窟第二五七窟南壁
【和:ばっこうくつだい二五七くつみなみへき
【中:Mo gao ku di 257 ku nan bi
晋・南北朝|彫刻・書画>莫高窟第二五七窟南壁

沙弥守戒自殺因縁図(模写 関友恵)
紙本着色
縦66.5 横459.0
北魏
  仏陀は信徒たちに、人間としての道を正しく実行するために守るべき戒めの一つとして「邪婬を行ってはならない」と説き、特に出家修行者には厳しい禁欲生活を課したことが知られている。本図は、その戒に殉じた若い沙彌の物語で、『賢愚経』を典拠とし、後に第二八五窟南壁下部に描かれるのみで、敦煌石窟以外には絵画作例が乏しい。当時の僧尼間に瀰漫していた汚穢に満ちた風潮を背景としているとの指摘ほともかく、仏教説語が、中国でいう連環画表現形式を、 いまだ模索段階とはいえここ敦煌石窟で探り得た名作である。
物語は東端から始まり、およそ七景に分けられて展開する。
かつて安陀国に篤信の長者が居り、息子を仏門に入れようと高徳の倍をたずねた。僧はその息子の道心堅固なことを察して剃髪授戒し、沙彌とした(場面①)。ある時沙彌が師に乞食を命ぜられて(場面②)、常々出家者に厚く布施する優婆塞の家を訪ねると、たまたま娘が留守を守っていた。若い沙彌を見て、日頃一人身を託っていた年頃の娘の心はたちまち恋の虜となり(場面③)、招じ入れて自らを妻としてこの家にとどまるよう執拗に迫った。娘の熱い思いと、守らなければならない神聖な戒律との板挟みになった沙彌は、娘の申し出を承知したと見せかけて別室に入り、己の頚を刎ねて絶命してしまう。娘の悲嘆はいうまでもない(場面④)。帰ってきた父親に娘は後悔の念を込めて事の次第を正直に話した(場面⑤)。父は、僧が俗人の家で死んだときは銭千の罰金を払うというこの国の掟に従い、王のもとへ銭を持参した。沙彌の高潔さに感動した王は(場面⑥)、沙彌を荼毘に付し、起塔して手厚く供養したという(場面⑥)。
各場面を明確に区画することなく専ら人物の姿態、表情、またその組み合わせに意を尽くした構成により、物語は簡潔にして生動感あふれる展開を見せる。各モチーフは全て水平視して描かれる。肉身に強い隈どりを施し、立体感を強調したインド風の人物(娘の白い肌以外は、当初の色調を失って灰褐色の濃淡に変わっている)に対し、建物は中国の伝統的な様式によっている。人物の着衣のうち、赤色の多くが黒化している中で、白緑や群青はよくその色調をとどめて背景色の赤茶と鮮やかな対比を見せ、また着衣に施された白い輪郭線がアクセントの効果を上げている。①、②の場面では、これ以降の連環式説話画に常套的に現れる色違いに配された山岳文様によって、画面に空間性を与える試みがなされているのも見逃せない。出所:『砂漠の美術館-永遠なる敦煌』中国敦煌研究院設立50周年記念

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